Material Waves 錫白 -SUZUHAKU-
2024.05.23PRODUCT

Material Waves 錫白 -SUZUHAKU-

Second Wave

Material Waves(マテリアルウェイブス)は「陶磁器×異素材」「工業×工芸」という観点から一つのプロダクトを考えていくことを通じ、新しい波(可能性)を追求していくプロジェクトです。

第2弾「錫白(すずはく)」は富山県高岡市の鋳物メーカー 株式会社 能作(のうさく)に協力を仰ぎ、陶磁器と金属(錫)を組み合わせるという新しい技法を確立しました。
一般的に陶磁器製のお皿の破損で多いのは縁が割れてしまう(チップする)ことです。NIKKO FINE BONE CHINAは陶磁器の中でもとても強度が高い素材ですが、縁に錫を組み合わせることでチップ強度を高めるだけではなく、機能美を兼ね備えたものができるのではないかと考え開発に着手しました。
構想から3年を費やし共に製作にあたってきた能作の開発課と当社デザイナー佐久間に、錫と陶磁器という異素材をどう掛け合わせ、一つの器に完成させていったのかを伺いました。

Profile
designer

株式会社 能作 NOUSAKU

大正5年(1916)年、富山県高岡の地で創業し仏具や茶道具、花器などの鋳物の製造を開始。
2003年には創業から受け継がれてきた職人の技術を持って世界初となる錫100%製のテーブルウェアを開発。
代表作は、真鍮製の「ベル」、錫100%製の「KAGO」。

また本社工場が日本インテリアデザイナー協会「JID AWARD 2018」大賞を受賞している。
https://www.nousaku.co.jp/

真鍮製の「ベル」
真鍮製「ベル」
ニューヨーク近代美術館(MoMA)の販売品に認定。
錫100%製の「KAGO - スクエア- L」
錫100%製「KAGO - スクエア- L」
ニューヨーク近代美術館(MoMA)の販売品に認定。

能作本社工場
株式会社 能作 本社工場
日本インテリアデザイナー協会「JID AWARD 2018」大賞受賞。
 

素材 -TIN-

-株式会社 能作(以下、能作)
一般的に金属は融点が高いイメージがありますが錫だけは例外です。錫は融点が低く柔らかい金属です。純粋な錫なら231.9℃が融点です。
能作のものづくりについてお話しすると、2003年当時錫100%のものづくりをしている企業はありませんでした。錫100%は柔らかすぎて加工性がゼロ、鋳造した時点で成形しないといけません。錫に他の金属を混ぜ固くすることが一般的で、金属は硬いのが当たり前。柔らかいものは金属ではないというような意識がありました。
しかし他の企業と差別化すべく、あえて錫100%で作ることにしました。加工ができないのであればしなければいい。曲がってしまうのであれば、曲げて使うものにすればいいという考えから能作を代表する新たなプロダクトが生まれました。
柔らかい錫に力を加えて曲げると「ピキピキ」という音が鳴ります。これは「錫鳴き/Tin Cry」という現象で、曲がる際に錫の結晶構造が変化するためにこのような独特な音が鳴ります。

錫

鋳造 -CASTING-

-能作
プレートの縁に取り付けられる錫は生型鋳造法(なまがたちゅうぞうほう)という方法で作られます。珪砂に少量の水分と粘土を混ぜた鋳物砂を木型の周りに押し固めて鋳型をつくる鋳造法で富山県高岡市で伝統的に用いられてきたものです。鋳型を焼成・薬品処理しないため、砂の再利用が容易で、量産性に優れています。
錫白の試作段階ではさまざまな鋳造方法を試しましたが、最終的には陶磁器の個体差に上手く適応できるこの生型鋳造法を採用しました。

錫白の試作品
錫白の試作品

開発秘話 -THE STORIES BEHIND THE PRODUCT-

-能作
開発当初はNIKKO FINE BONE CHINAと錫100%をどう組み合わせるか、形状や錫の割合などの試行錯誤を繰り返し行いました。特に錫を型から外したときに出来るバリ※の処理と、食器との境目を綺麗に仕上げる方法や表面処理について何度も試作を繰り返しました。構想から約3年、最終的に錫を鋳造後に貼り合わせることで、作業効率と美しい仕上がりにたどり着きました。
※バリ 素材を加工した際に発生する出っ張りやトゲのこと。「かえり」ともいう。

-ニッコー株式会社 デザイン室 佐久間 和(以下、佐久間)
最初は完全に鋳包み(いぐるみ※)で作りたかったのですが、試作を繰り返す中で大きいサイズの食器だと難しいことがわかってきました。
そもそも鋳包みとバリはつきものなので、バリを無くすというのが至難の業でした。結果的に綺麗な仕上がりを考慮して貼り合わせという手法に変更となりました。
陶磁器は形やサイズにバラツキがあり、個々の若干の違いも考慮して均等に綺麗な仕上げをしていくというは難しかったですが、表と裏に分かれた錫製の縁部分を同じ錫を使用して付けるので境目も綺麗になりました。
またプレートの色に合わせて錫にも金箔、銅箔、錫箔を施すことで、錫の強度を活かしながらお好みのシーンに合ったカラーをお選びいただけます。
※鋳包み 鋳型にあらかじめ一体化したい材料を置き、そこに溶解した金属を注ぎ込んで一体化する方法

錫を流し込む様子

生型鋳造法で使用した型

錫を貼り合わせる様子

錫を磨く様子

箔加工の様子

錫白 -SUZUHAKU-

-佐久間
NIKKO FINE BONE CHINAの特徴でもある白さと製品の仕上げに使用している箔から「ハク」という音を取り出し、錫という素材と合わせ「錫白(すずはく)」と名付けました。

このプロダクトに合わせて専用に開発された26cmプレートをベースにし、縁に錫を組み合わせた27cmプレートです。
スタンダードなリムプレート形状なのでディナーなどのメインプレートとして幅広くご使用いただけます。

錫の上から金箔・銅箔・錫箔の加飾とコーティングを施しています。ご使用後は中性洗剤でやさしく手洗いし、水分をよく拭き取ってから乾燥させて下さい。金属と陶磁器という異素材を組み合わせた機能的で美しい製品の魅力を是非生活の中で味わってください。

3カラー並んだ錫白のプレート

Material Waves 錫白

Material Waves 錫白のアップ

Material Waves 錫白を使った盛り付け

Material Waves 錫白を使った盛り付け

Material Waves 錫白を使った盛り付け

Material Waves 錫白のテーブルコーディネート

Material Waves 錫白のテーブルコーディネート

Material Waves 錫白のテーブルコーディネート

錫白 商品一覧

鋳造×NIKKO -CASTING meets NIKKO-

-能作
陶磁器の縁がチップする点を縁に施した錫がカバーすることで強度が上がるということで、装飾的な意味だけでなく強度面でも効果があること、異素材を組み合わせて新しいモノを生み出すのは面白いですね。

-佐久間
錫とボーンチャイナを組み合わせるという取り組みは、当初想定していた以上に難しく、何度も失敗を繰り返しながらも根気強くリクエストに応えてくれた能作さんの姿勢と技術力、そして最後は現場からのアイデアがあり形になりました。
何か新しい技法を作り出すには、見えないところで手間ひまをかけて生まれるものだということを改めて実感するプロジェクトとなりました。
この錫白で確立した技法は今後、新たな展開につなげていきたいと思います。

素材の波 新しい可能性 -Material Waves-

「錫白」では金属(錫)と陶磁器という異素材の掛け合わせに挑戦しました。陶磁器は天然原料を成形し焼き締める過程で形づくられるため一つ一つの製品に多少のブレが生じるものです。それにアジャストするように錫を加工し固定する工程が想像以上に難易度が高かったことが開発の年月に表れています。
また、異素材を緩やかに繋ぐために錫に「箔」を施し、NIKKO FINE BONE CHINAにも色釉薬を採用することとなり、多くの職人の手を介在したプロダクトに仕上がっています。
能作さんが作る錫は金属でありながら柔軟性があるため、今回の「錫白」は使いこんでいく中で錫の縁部分に経年変化が起こると思われます。曲がることがない陶磁器と曲がる錫が組み合わさり、永い時間をかけてゆっくりと馴染んでいきながら完成していく、そんな商品が生まれました。
今後もMaterial Wavesでは新たな素材で新たな波を生み出してまいります。

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Product

ニッコーの店舗で展示販売中

NIKKO SHOWROOM / STORE
(LOST AND FOUND TOKYO STORE)

住所

〒151-0063 東京都渋谷区富ケ谷1丁目15-12

営業時間

11:00~19:00

定休日

火曜日

TEL/FAX

03-5454-8925

アクセス

東京メトロ千代田線 代々木公園駅から徒歩3分
小田急小田原線 代々木八幡駅から徒歩5分